財務総研が最新の分析結果を公表高所得層のシェア変動が明らかに

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第511号(2025年9月29日発行)

財務総研が最新の分析結果を公表高所得層のシェア変動が明らかに

財務総合政策研究所は、ディスカッション・ペーパー「所得税データを用いた日本の上位所得シェアの推計:2008~2023年」を公表した。今回の研究は、申告所得税や民間給与実態統計調査などを用い、日本における高所得層の所得シェアを精緻に推計したもの。従来の調査では把握が難しかった超高額所得層の動向を明らかにしている。

分析では、2008年以降に拡充された税データを活用し、キャピタルゲインを含めた場合と含めない場合の両面から検証を行っている。キャピタルゲインを含まない所得については、2013年以降の景気回復期に上位0.01%や0.1%の所得シェアが拡大した一方で、上位1%や10%といった層のシェアは低下していたことが示された。背景には、経営者報酬などの高額給与の拡大とともに、女性や高齢者の労働参加率の上昇などがあると考えられている。さらに、キャピタルゲインを含めた分析では、上位0.01%や0.1%のシェアが景気回復期に顕著に上昇した一方、上位5%や10%といったより広い層のシェアは低下傾向にあることが明らかに。資産市場の変動がごく一部の超富裕層に強く作用している構図が浮かび上がった。

なお、本研究は財務省の公式見解ではないが、税務データを活用した詳細な分析は、所得分布や格差の実態を理解する上で重要な知見を提供するもの。今後の再分配政策や社会保障制度を検討する上でも、こうした実証的な研究は大きな役割を果たすと期待される。

最低賃金が過去最大の引上げ 政府は中小企業支援を拡充

令和7年度の最低賃金改定について、全国の地方最低賃金審議会での答申が出そろい、全国加重平均は過去最大となる66円引上げの1,121円となった。引上げ率は、中央最低賃金審議会が8月に示した目安の6.0%を上回る6.3%で、中小企業にとって人件費負担の増加は避けられない状況。こうした動きを受け、政府は「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に基づき支援策を強化する。

業務改善助成金は、対象範囲が広がり、地域別最低賃金の改定日前に賃金を引き上げる場合も助成対象となる。助成率は賃金水準に応じて3/4または4/5で、上限は30万~600万円。また、経済産業省のものづくり補助金については、生産性向上に役立つ設備投資を行った場合の補助率が2/3に引き上げられ、上限は最大4,000万円。IT導入補助金も補助率が2/3に拡充され、上限は450万円となる。さらに、省力化投資を後押しする中小企業省力化投資補助金は、上限が750万円から1億円に引き上げられ、補助率も最大2/3に拡大された。

あわせて「優先採択」の仕組みも導入されている。改定後の最低賃金未満で働く従業員を一定数雇用している事業者や、中央最低賃金審議会が示した目安以上の賃上げを実施する事業者は、各補助金の審査で加点され、採択が優先される。

政府は価格転嫁や取引適正化の徹底とあわせて、生産性向上を後押しする資金支援を強化し、中小企業の経営を幅広く支えていく考えだ。

日本ビズアップ株式会社 発行「NEWSWAVE」より)

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